宮城の民話 〜瓜子姫子〜
やぁ、みんな。
無理やり小学生の頃のじゆうちょうから引っ張り出された"二口つぐむ"だよ。
なぜかボクは二つ口があるんだ。よろしくね。
だはは!相変わらず気持ち悪っ!
おらは"並田ツネ"!よろしくな!
ツネくんはいつも涙が止まらない子なんだけどいいやつだからよろしくね。
別に悲しいわけじゃないんだよ!
出た涙はあごの裏についた排水口から体内に戻って永久的に出続けるんだ!
怖いからやめて
ごめんよ!小学生の発想から生み出されたボクらは常人ではないのさ!
君こそどっちの口でしゃべってるんだい?
より尖ってる大きいほうの口でしゃべると拡声器ばりに大きい声がでるよ。
今は小さいほうの口でしゃべってる。
ちなみに体はこうなってるよ。
あぁ・・名札を見る限りつぐむくんにはモチーフがあったんだね。
これはギリギリアウトだからこれ以上話すのはやめておくよ。
ツネくんは優しいね。
ところでさ、宮城県の民話って聞いたことがあるかい?
民話?ん〜聞いたことがないな〜!
そもそもおらたちが民話に出てくる以上の化け物だし!
一里ある。
でね、今日は民話の中から「瓜子姫子」を紹介するよ。
うん!暇だし聞かせてー!
むかしむかしの話です。
あるところに爺さまと婆さまがおりました。
爺さまは山さ柴ば刈りにいって、婆さまは川させんたくさいったのです。婆さまがざぶざぶと、せんたくをしていると、瓜が流れてきたのです。「爺とたべっぺ」とひろって、家さ戻ってきました。
ん?ちょっと待って!既視感!既視感!
この話聞いたことあるよ!
所々訛りが入ってて桃が瓜に変わっただけじゃん!
ツネくんここでそんなわーわー言われたらこの話もっと長くなっちゃうんだ。
もう少し黙って聞いててね。
・・・・・・うん。
半台さのせて二つに割ったら、中からめんこい女ごの赤ん坊が生まれたのです。
爺さまと婆さまは大喜びして、瓜子姫と名ばつけてめんこがって育てたのです。
で、瓜子姫は爺さま婆さまに可愛がられ得意な機織りをして暮らしていたんだけど、あるとき二人とも家を出なくちゃいけない時があって、誰が来ても絶対戸を開けて出てはいけないよと瓜子姫に忠告するんだ。美人だって噂が村中に知れてたから不安だったんだろうね。
なんか桃の話かと思ったら鶴の話になってきてない?
あれ?今この話どっちに向かってるんだ!
でね、やっぱりそういうときって来るのよ。怪しいやつ。
「開けろ、開けろ」ってきかなくてついに瓜子姫が根負けして開けちゃうと......。
いきなり天の邪鬼(あまのじゃく)が入ってきたのです。
「とって食うぞ」と言って、
瓜子姫ばまな板の上さのせて切って食べてしまったのです。
そして瓜子姫の皮ばはいで自分の顔さかぶり、着物も取り替えて知らんぷりをしていたのでした。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!!!!
怖すぎるよぉ!!!!
展開の受け止め方がわからないよ!!
バッドエンドのストーリーでもここまで酷い描写は見たことがないよ。
妙にリアルに想像しちゃうよね、特に皮。
やめてぇーーー!!!
で?で?そのあとはどうなったの?いい話に戻るんだよね?ね?
そのまま数日なりすまして、機を織り続けてたんだ。
そんなある日、村の長者から使いがやってきて瓜子姫を嫁に貰うってことになってね、その次の日になりすました瓜子姫に水で顔を洗ってあげたら化けの皮がはがれて、そのまま天の邪鬼になって逃げていったそうだよ。
え、もしかして.....逃げただけ?
うん。
ごめん、この話は結局何なの!?
全然整理できないよ!
僕もわからないよ。
だから今日君に教えたんだ。
この混沌とモヤっとした気持ちをシェアするためにね。
底意地が悪い。
えーなんか嫌な話だー!
瓜子姫かわいそうー!
ちなみにこの話の終わり方にはいくつか説があって、帰ってきた爺さんと婆さんが異変に気づいて天の邪鬼の正体がわかると棍棒と竿でボコボコに殴りつけて仇討ちしたパターンもあるよ。
それもなんか嫌だよ!!
結局この話の何が教訓だったんだろうね。
じじいとばばあは意外と数日も騙せるぞってことかな?
それは違うよ!
教訓なんて関係ないんだろうね。
しかし瓜子姫になりすまして数日すごす天の邪鬼の動機が怖いよね。
どういう気持ちで機織りしてたんだか。
鬼って怖いねー。
へーしかしこんな民話が残ってるんだ!
そうなんだ。
有名な昔話に出世できずに地方に残る民話はまだまだ面白い話がたくさんありそうだよ。
ボクがここで語るのは宮城県の民話だけに留めておくつもりだけどね。
そうなんだー。
でも地元の話を知るのって面白いね!
そう!その気持ちを伝えたかった!
さすがツネくんは優しいね。
あーなんだか凄く疲れたよ......。
こんな話になると思わなかったし。
二人も疲れたよね?
ん?二人?誰のことだい?
あ、つぐむくん知らないっけ?
おらの姿はこうなってるんだ!
怖ぇぇぇ!!!!!!
お前が一番ヤバいだろ!!!!
鬼!!!!鬼めっ!!!!
あ、初めて大きいほうの口で喋った。
図太いぞ!細倉マインパーク!
先日、地元宮城県は栗原市にある「細倉マインパーク」に行ってきた。
ここは元々鉱山であり、現在は市営の観光坑道として学習、体験ができる施設になっている。
実は幼稚園児の頃一度だけ行ったことがあるのだが、号泣して二度と行きたくないと親に泣きついていたようだ。
トラウマを乗り越えること、なぜ号泣したのか、なぜ怖かったのか。
その原因を調査するため15年以上の時を経て再度訪れたのである。
(実はやや怪しい噂も嗅ぎ付けている....)
仙台市内から車で高速道路を使い1時間40分程度で到着。
入場料は通常大人900円のところを半額の450円で入ることができた。
入り口から出口まで一周するようなコースを約40分かけて進んで行く。
中央にいるのはマスコットのマイン坊やだ。
薄暗く狭い坑道を進んで行く。
するといきなりマイン坊やが現れ音声ガイドが始まった。
あまりにも唐突に喋り出したので声をあげて驚いた。
しばらく坑道の歴史を紹介するパネルや道具などの展示が続くと.....
「うわっ!!人だ!!」
と思ったらリアルすぎる作業員の人形だった。
(思い出した、私は当時これが怖くて泣いていたのだ)
決め顔の作業員。
細倉鉱山の歴史を学びながら先へ進み階段を降りると、今度は「タイムトラベルゾーン」に入った。
「ホソキュリアンとは、ここ細倉マインパークに生まれ、人類と自然とのより良い関係を模索する新しい生命体です。ホソキュリアンは私たちの愛を象徴したものであるのです。そして今、誕生のシーンに出会うのです。」
大自然との関わりについて目覚めてもらうべく....!?
愛を象徴したホソキュリアン...!?
説明にはやや怪しい文章が綴られている。
そして自己存在を崩壊させるような案内板。
いよいよ足を踏み入れてはならない世界に来た感じがある。
(これが噂の....)
ここは光の届かない宇宙の世界。
かろうじて薄明かりが照らす道を進んで行くと....
なんじゃこりゃぁ!!!!
不気味な低音が爆音で響き渡る空間に、胎児が守られている謎のオブジェ。
「赤ちゃんホソキュリアンになっていただきます。」
ほぉ...あの胎児は私たち自身であると....。
自我を保て...自我を保つんだ.......。
そう思いながら先へ進むと、
なぜか山神社があり、さらには、
いきなり砂金取り体験ゾーンが現れた。
受付にはおじいさんがひとり。
さっきまでの設定はどこにいったのやらとは思いながらも、せっかくなので体験してみることに。
1回400円で制限時間は20分。
しかし坑道の真ん中でただただお客さんを待つおじいさんの姿に少し切なくなる。
「お客さん来ますか!?」
「そうだね〜。夏休みになるといっぱい家族連れが来るんだけっども。今日は午後になったらもっと来るんでねぇかな。」
「いっぱい来るといいですねぇ。」
そんな簡単な会話を交わし、いよいよ実践。
ボールを借りて、このように回して砂を落として....
小さいけど見つかりました。
幸先よく見つけたものの結局この1個だけしか見つからず。
見つけた砂金は記念品としてその場でラミネートしてくれる。
おじいちゃんが2個おまけしてくれた。
比べてみると自分が取った上の砂金の小ささたるや。
20分ほどホソキュリアンの世界と断絶していたことをすっかり忘れ、次に現れたのはまたしても世界観が強い展示。
太陽 天 火の神
風 大気 竜巻の神
いや、思想が強い!!!!
純日本的な神々が誕生の話を学ぶことから始まったタイムトラベラー。
次は地球史についての展示が並ぶ。
まずは恐竜の化石。
(細倉鉱山で化石が発掘された記録はございません。)
エジプトの壁画。
(日本の話だけでもございません。)
背丈が低すぎるモアイ像。
世界観が勝手に観光客を追い抜いて行く。
長い長い階段を昇ると、
「ゴゴゴゴゴゴォォォッォォ!!」
何の音かもわからぬ爆音とストロボが点滅。
一人でこの道を進まねばならぬ恐怖はかなりのものがある。
なるほど、あの爆音は火山の噴火だった。
「自然のバランスが崩れると天災が起こりやすくなります。」
「大地殻変動はホソキュリアン=地球からの人類への警鐘なのです。」
確率と等号の勉強からやり直す必要がありそうな一文。
「一人一人が自然の法則と生命体の法則に意識を向け、より良い環境を想像することによって、私たちの未来に平和で幸福な理想社会が構築できるのです。」
やはりここも理科の勉強からやり直す必要がありそうな、聞き慣れない法則が出てくる。
とりわけ最後の一文からはユートピア思想を強く感じる。
慌ただしい日常と、自然との共生を目指すユートピア的な細倉マインパーク。
このテーマが随所に見られたのはどうやらそういうことらしい。
マイン(mine)パークというネーミングも、このmineは二重に意味を含んでいると思わざるをえない。
ようやくこの施設の理念を理解できた。
いや、それにしても思想が強い!!!!
長かったタイムトラベルもようやくお終い。
出口を抜けるとすぐお土産コーナーに出る。
「おかえりなさい」
店内を掃除していたレジ打ちのおばちゃんの一声に安堵する。
無事現実世界に帰ってこれた。
そのままお土産コーナーを見ていると、
1999年に発売された遊戯王のガチャガチャが中身が入った状態で置いてあった。
これが一番のタイムトラベルじゃないか....。
懐かしさに負け全てなくなるまで回してみた。
ご覧の有様である。
ずっと残っていた理由に納得。
15年の時を経て、当時は人形に怯え、今は思想に一抹の恐怖を感じた細倉マインパーク。
しかしながら、観光しながらツッコミ所があり、迫力満点の音響効果と坑道を歩くという体験は実に面白かった。
日曜日の朝に訪れたが、客は自分の後に家族連れが3組程度と、かなり空いていた。
気楽に伸び伸びと観光ができるのは観光客にとっては優しい一面、あまりにも集客が少ないのは寂しい。
この記事を読んだ人の中からぜひ実際に足を運ぶ人が現れることを願っている。
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